『ある女性史の始まり』〜序章〜

エピローグ

 これは、私自身が一人のある空想上の女性の人生を想像して描いた物語である。私の知る限りその女性は(と、言っても、当然のことではあるが、私自身、実際に会ったこともないのであるが)性に悩みを抱えた一人の女性ということに注意して頂きたい。また、想像であるため、仮にこのような女性が存在しても、その痛みを分からないという私自身の想像力のなさも、配慮して頂きたい。

序章

 私は、生まれつき性別といものがない。これに気がついたのは、大人になってからだ。私は、一人の女性としてこの世に生を受けたはずであった・・。中学だったか、高校だったかは、覚えていない。性教育の時間に大人になると女性には、月に一回のペースで特別な日が来るということらしい。私もいつ大人の女性になれる日がくるのだろうか?そんな、ぼんやりとした考えのまま、毎日を楽しく過ごしていた。そんな日々を過ごしている間に、いつの間にか、時だけが流れていった。


 来たるべき日は、訪れなかった。
それを知ったとき、私は、死にたいくらい、みじめな気持ちになった。
その気持ちは今でも、ほとんど変わりはない。


 周りの人は、普通に恋愛をして、普通に性行為を行っている。
そんな話を聞くたび、自分がみじめで、どうしようもなくなった。
 妊婦を見るたび、死にたいという衝動が襲ってくる。
「殺してやりたい。何も知らない無知なやつら全て・・」
それと同時に、そんな幸せそうな、顔が酷く憎らしく見えた。
いや、そうしないと、自分自身を保っていられないのだ・・。
何で、私は産まれたのか?
私は男ですか?女ですか?


この世に女性と男性の二種類の人間がいる。
「私は何?」
「見た目は一応、女みたいには見える。でも、実際はどう?」
「男性を好きになるのが女性?」
「じゃあ、同性愛者は?それでも、女性だよ・・。」
「見た目だって、男性みたいな人だっている。」
「女性って何?」
「私は何?」
そんな、ことを自問自答する毎日が続く・・。


「女性になりたい。」
いつからだろう・・。そんなことを、考え出したのは・・。
「せめて、セックスだけでもしたい・・。」
いつの間にか、私の中に、そんな願望が芽生え始めていた。
いや、せめて、「女性であるという証」が欲しかったのかもしれない・・。
いや、せめて、世の中の「女性」が感じる喜びを知りたかっただけなのかもしれない・・。


ネット上のあるブログ記事を読んだ。そこにも、私のような人がいた・・。
だが、私とは決定的に違ってた。
その人は紛れもなく女性だった。
それを読んだ人々の「おめでとう」という言葉。
惨めな気持ちがまた、自分を襲う。自分が制御できなくなる。
その人の記事に「消えろ」と書いた。
それを怒りだという人がいる・・。
本音をいうと、「私の目の前に現れないで。」という願いだった。
そうしないと、死にたいという衝動に負けてしまう・・。


私のことを、狂ってるっていう人がいる。
「人はセックスをせずに、死ぬと妖精になる」って聞いた。
私は、妖精になんか、ならなくても、いい・・。
堕天使って呼ばれてもいい・・。
「女性になりたい。」


私のことを分かってくれそうな、人を見つけた・・。
思い切って「セックス」してくださいと、お願いをしてみた。
駄目だって分かってたんだけどね・・。
「断られちゃった・・。」
「やり方がまずかったのかな・・。」


人が私を狂人と呼ぶ。そんなことは、分かってるつもりだ・・。
でも、狂ってるって言われても、それでも、私は女性でありたい・・。
せめて、その「女性」というものの喜びを知りたい・・。
女性になれる日はくるのだろうか・・?

序章の続き

ここで、私、作者に話を戻そう。作者の頭では、想像力が貧困すぎて、続きを書くのは無理そうだ。
『ある女性史の始まり』の続きは、ある女性本人に書いてもらうことにしよう・・。
おっと、忘れては、いけない。ある女性は私の空想上の人物であった。
でも、もし、仮にこのような女性がいるなら、私は彼女にこう言いたい。
「あなたがそれを望むなら、あなたは、間違いなく、すでに女性ですよ」と・・。